なぜフィリピンで自衛隊がミサイル発射?――背景にアメリカの対中国「集団防衛」構想

フィリピンで行われた多国間合同軍事演習「バリカタン」に自衛隊が初めて正式に参加し、地対艦ミサイルの実射訓練まで行った。一昔前はあり得なかった出来事だが、なぜいまこのような動きが進んでいるのか。
布施祐仁 2026.05.09
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 4月20日から5月8日にかけてフィリピンで行われた米比主催の年次合同演習「バリカタン」に、自衛隊が初めて「正式に」参加した。

 バリカタンとは、タガログ語で「肩を並べて」を意味する。今年は、米比のほか、日本、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、フランスが参加した。

 日本は2012年以降、オブザーバー参加をしてきたが、今年から正式な参加国となった。これに伴い、演習に参加した自衛官の数も、昨年の約150人から約1400人へと10倍近くに増えた。

 また、自衛隊とフィリピン軍が相互に訪問して共同訓練などを行う際の地位や手続きを定めた「円滑化協定(RAA)」が昨年9月に発効したことで武器をフィリピン国内に持ち込めるようになり、昨年は護衛艦1隻だけだった参加アセットも大幅に拡大した。

フィリピンで行われたバリカタン演習に参加した米国、フィリピン、日本、オーストラリアの部隊(統合幕僚監部X公式アカウントより)

フィリピンで行われたバリカタン演習に参加した米国、フィリピン、日本、オーストラリアの部隊(統合幕僚監部X公式アカウントより)

各国部隊のセンサーと火力を統合し「ワンチーム」で

 ひときわ注目を集めたのは、陸上自衛隊の地対艦ミサイル部隊がミサイルを実射した場面だった。

 自衛隊がフィリピン国内でミサイルを発射するのは、史上初めてだったからだ。

 ミサイルの実射は、「MARSTRIKE(海上攻撃演習)」と呼ばれる、洋上の敵艦船を攻撃する想定の演習の中で行われた。

 5月6日、南シナ海に面したルソン島北部のパオアイ砂丘に展開した陸上自衛隊第1地対艦ミサイル連隊(拠点は北海道の北千歳駐屯地)が「88式地対艦誘導弾」2発を発射。南シナ海の洋上を約75キロ飛行し、標的艦(フィリピン海軍の退役した哨戒艦「ケソン」)に命中した。

ルソン島北部のパオアイ砂丘から南シナ海に向かって88式地対艦誘導弾を発射する陸上自衛隊。隣には米海兵隊の地対艦ミサイルシステム「ネメシス」の無人発射機が(統合幕僚監部X公式アカウントより)

ルソン島北部のパオアイ砂丘から南シナ海に向かって88式地対艦誘導弾を発射する陸上自衛隊。隣には米海兵隊の地対艦ミサイルシステム「ネメシス」の無人発射機が(統合幕僚監部X公式アカウントより)

 ミサイルの実射は行わなかったが、この訓練には米海兵隊の地対艦ミサイル部隊も参加し、パオアイ砂丘に最新鋭の地対艦ミサイルシステム「ネメシス」を展開させた。

 米インド太平洋軍やフィリピン軍の公式ウェブサイトに掲載されたバリカタンに関する記事によると、MARSTRIKEには陸上自衛隊と米海兵隊の地対艦ミサイルのほかにも、フィリピン空軍の戦闘機、米海軍の哨戒機、米海兵隊の無人偵察機、陸上自衛隊の無人偵察機、フィリピン軍とカナダ軍のフリゲート艦なども参加したという。

 米インド太平洋軍の記事には、前方統合任務部隊司令官を務めたトーマス・サベージ米海兵隊少将の重要なコメントも引用されている。

「MARSTRIKEは、複数の領域にわたるセンサーと火力(ミサイルなど)を統合し、共通の戦術目標を達成することで、我々の合同・統合部隊の強さを実証した」

「今回の演習では、フィリピン軍、米軍統合部隊、自衛隊が、有能で即応性と致死性(敵を殺傷・破壊する能力)を備えた一つのチームとして海上目標に対して長距離打撃を実施できることを実証した」

 このコメントからも、演習参加国の部隊は目標情報の獲得からターゲッティング(攻撃目標の選定)、攻撃の実施に至るまでの一連の作戦を、文字通り「一体となって」実施したことがわかる。

米国の第一列島線「集団防衛」構想

 こうした演習の背景には、米国の安保戦略がある。

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