憲法9条のリアルな効力ーーアメリカの無法な戦争で自衛官が犠牲になるのを防いできた厳然たる事実

ホルムズ海峡やその周辺への自衛隊派遣を求めるトランプ米大統領に対して、高市首相は「法律の範囲内で、できる事とできない事がある」と説明し、派遣が難しいことを伝えた。これを一部の野党やメディアが「憲法9条のおかげで自衛隊を派遣せずに済んだ」と評価したのに対し、9条改正をねらう与党政治家は「戯れ言」と批判した。本当のところは、どうなのだろうか?
布施祐仁 2026.05.03
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9条のおかげで自衛隊派遣を断れたのは「戯れ言」?

 ホルムズ海峡やその周辺への自衛隊派遣を求めたトランプ米大統領に対して、高市首相は「法律の範囲内で、できる事とできない事がある」と説明し、戦闘が継続している現時点での派遣が難しいことを伝えた。

 これを一部の野党やメディアが「憲法9条のおかげで自衛隊を派遣せずに済んだ」と評価したのに対し、日本維新の会の馬場伸幸議員はこう批判した。

 「一部の野党、メディアから憲法9条のおかげで自衛隊派遣を断れる旨の言説が喜々として発信されているが、戯れ言(ざれごと)にすぎない」(4月9日の衆議院憲法審査会)

 「戯れ言」とは道理に合わない馬鹿げた話を意味するが、私はそうは思わない。

 馬場氏は「普通の国で軍隊の海外派遣は政治判断の問題」と指摘した。確かに欧州諸国は、トランプ米大統領が求めた中東地域への軍隊派遣に政治判断で応じなかった。日本に憲法9条がなかったとしても、日本政府の政治判断で自衛隊派遣を断ることはもちろん理論上は可能だ。だが、現実にそれができたかというと、かなり怪しい。

 スペインのサンチェス首相やイタリアのメローニ首相は、アメリカのイラン攻撃が国際法違反だと批判し、協力できない姿勢を明確に示した。イギリスのスターマー首相、フランスのマクロン大統領、ドイツのメルツ首相も「これは我々の戦争ではない」と語り、軍隊派遣を求めるトランプ大統領を突き放した。

 はたして、高市早苗首相に欧州の首脳たちと同じようなことが言えただろうか。アメリカのイラン攻撃が開始された2月28日以降、高市首相がこれに対する否定的な見解を表明したことは一度もない。国会で攻撃の合法性を問われても、「我が国として法的評価は差し控える」と逃げ続けている。

 3月の日米首脳会談でのトランプ大統領をひたすらヨイショするような振る舞いと合わせて考えても、もし憲法9条がなかったら、自衛隊派遣を断れなかったのではないかと思わざるを得ない。

 憲法9条がなければ断れないというのは実に情けないが、それこそが日本の異常な「対米従属」の現実なのだ。

3月19日にホワイトハウスで行われた日米首脳会談。高市首相はトランプ大統領との蜜月ぶりをアピール(首相官邸ウェブサイトより)

3月19日にホワイトハウスで行われた日米首脳会談。高市首相はトランプ大統領との蜜月ぶりをアピール(首相官邸ウェブサイトより)

日本を再武装させたアメリカの「本当の目的」とは

 憲法9条は、単に平和主義の理想を掲げるだけではなく、同盟国であるアメリカの戦争に自衛隊が動員されるのを防ぐ現実的な効力を発揮してきた。

 そもそも、アメリカが日本を再武装させた背景には、自らの戦争に日本の戦力を活用するという思惑があった。 

 戦後の日本の再武装は、1950年8月の警察予備隊の創設から始まった。当時、日本は連合国の占領下で、警察予備隊の創設もGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の指令によるものであった。

 表向きには国内の治安維持が目的とされた警察予備隊の創設であったが、アメリカは日本の再武装に向けた第一歩と考えていた。

 しかも、この再武装構想には、アメリカが世界で行う戦争に日本の戦力を活用できるようにするという目的が最初から織り込まれていた。

 このことを裏付けるアメリカの公文書がある。

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続きは、3798文字あります。
  • 岸に託した9条改正と安保改定の“失敗”
  • 無法なベトナム戦争から自衛官の命を守った憲法9条
  • 集団的自衛権行使の解禁後もなお残る9条の制約

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