トランプ大統領、イラン国内の全発電所への攻撃を予告。民間インフラへの攻撃は「戦争犯罪」

ホワイトハウスで国民向けに演説したトランプ米大統領は、対イラン軍事作戦について「すべての軍事目標をまもなく達成する」としつつ、あと2~3週間は激しい攻撃を続けると明言。そして、イランとの協議で合意が成立しなければ、イラン国内のすべての発電所を攻撃すると警告しました。しかし、発電所などの民間インフラへの攻撃は、原則として国際人道法に反する「戦争犯罪」です。
布施祐仁 2026.04.02
誰でも

「あと2~3週間、激しい攻撃を続ける」

 1日夜(日本時間2日午前)、ホワイトハウスで国民向けに演説したトランプ米大統領は、「この4週間、我々は圧倒的な勝利を収めてきた。これほどまでの勝利は誰も目にしたことがないだろう。米国はまもなくすべての軍事目標を達成する」と語り、対イラン軍事作戦の成果を強調した。

 トランプ氏は今回の作戦の軍事目標として、①イランが核兵器を保有できない状態の確保②空軍とミサイル戦力の壊滅③海軍の壊滅④軍事産業基盤の壊滅⑤親イラン派武装組織が地域を不安定化させる能力の無力化――を挙げた。そして、この目標を完遂するため、あと2~3週間イランに激しい攻撃を加え、「彼らを『石器時代』へと引き戻すつもりだ」と宣言した。

対イラン軍事作戦について国民向けに演説するトランプ大統領(Xのホワイトハウス公式アカウントより)

対イラン軍事作戦について国民向けに演説するトランプ大統領(Xのホワイトハウス公式アカウントより)

民用物への無差別攻撃は戦争犯罪

 看過できないのは、上記のような軍事目標だけでなく、発電所をはじめとする民間インフラへの攻撃も予告したことだ。

 トランプ大統領「(2~3週間の)期間中に合意が成立しなければ、イランのすべての発電所に対し、おそらく同時多発的に極めて厳しい攻撃をするつもりだ」

 イラン国内のすべての発電所を同時多発的に攻撃するのは、「戦争犯罪」である。

 「戦争のルール」を定める国際人道法は、「民用物」(軍事目標以外のすべての物)への攻撃を原則として禁止している(ジュネーブ条約第1追加議定書第52条)。ただし、それが「軍事活動に効果的に資するもの」として使用されていることが明らかな場合は、攻撃が合法とされる。その場合でも、軍事的利益に比べて文民(一般市民)の被害を過度に引き起こすことが予測される攻撃は認められない(同条約51条5項B)。

 イラン国内のすべての発電所を同時多発的に攻撃すれば、病院機能の停止など甚大な人道危機を引き起こす。これは、まぎれもない「戦争犯罪」である。

米国はロシアの戦争犯罪を厳しく批判してきた

 ウクライナへの侵攻を続けているロシアも、これまで発電所など民間インフラへの攻撃を行ってきた。

 米国はこれを「戦争犯罪」と批判してきた。

 たとえば、2022年9月22日の国連安保理閣僚級会合でアントニー・ブリンケン国務長官は、「ダム、橋、発電所、病院、その他の民間インフラに対するロシア軍の攻撃は増加しており、これは国際人道法に対する露骨な違反行為である」と述べて、ロシアの行為を厳しく批判した。

 また、同年12月12日にG7の首脳が発出した共同声明も、「我々は、ウクライナ全土の重要インフラ、特にエネルギー施設や水道施設、都市を標的としたロシアの非人道的かつ残忍な攻撃を非難し、無差別攻撃や民間人または民間施設への攻撃は戦争犯罪であることを改めて強調する」と述べている。

日本は米国の戦争犯罪を止めるべき

 常日頃、「法の支配に基づく国際秩序」の重要性を強調している日本政府も、ロシアがウクライナに対して行ってきた国際法違反の行為を厳しく批判してきた。

 たとえば、2023年3月17日の衆議院外務委員会で当時の林芳正外務大臣が、「ロシアの攻撃によりまして、ウクライナ各地において多くの市民が犠牲になっているということを極めて深刻に受け止めております。民間人や民間施設への攻撃、これは国際法違反であり、断じて正当化できないものであり、強く非難をいたします」と発言している。

 国際法の適用は、「ダブルスタンダード」であってはならない。すでに日本政府は、ロシアのウクライナに対する侵攻は国連憲章違反の侵略だと非難しながら、今回の米国とイスラエルによるイラン攻撃については米国との関係悪化を避けるために法的評価から逃げ続けている。これは国際社会における日本の信頼を大きく毀損するものだ。

 せめて、トランプ大統領が予告した「イラン国内のすべての発電所への同時多発的攻撃」については、「国際法に違反する」と毅然と述べて制止すべきだ。それすら言えないのであれば、日本政府が今後「法の支配」の重要性をいくら口にしても、誰も耳を傾けなくなるだろう。

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