「日本、韓国から米軍撤収を」「第2列島線へ後退しても米国の利益は守れる」――米専門家の注目すべき提言
米国は台湾防衛へのコミットメントを止め、日本やフィリピンなど「第1列島線」に前方展開する米軍も撤収させ、グアムなど「第2列島線」に戦力の重心を移すべきだ――。
こんな思い切った提言(タイトルは「アジアのための第2列島線戦略」)が、10日、米国のシンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ」のウェブサイトにアップされた。
執筆したのは、同シンクタンクの上級研究員で軍事分析ディレクターを務めるジェニファー・カバナ氏だ。過去には、カーネギー国際平和財団のアメリカ国家戦略プログラムの上級研究員や、ランド研究所の陸軍戦略プログラムのディレクターも務めた。
日本では日米安保体制が不朽・不滅のものと捉えられている節があるが、米国の安全保障の専門家・戦略家からこういう主張も出始めているということを知っておく必要があると思うので、概要を紹介したい。

10日、米シンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ」のウェブサイトにアップされた「アジアのための第2列島線戦略」と題する提言。
米国が軍事力で守るべき「核心的利益」とは
提言が出発点とするのは、「米国が軍事力を使って守るべきアジアでの核心的利益とは何か」という問いだ。
カバナ氏はそれを「重要な市場や貿易ルートへのアクセスの確保」とし、これを守るために現在のような大規模な米軍の前方展開は必要ないと主張する。
現在、米国は日本、韓国、フィリピン、オーストラリアと防衛同盟を結び、約9万人の兵力を配置している(最多は日本の約5万5000人)。しかし論文は、中国本土に近い第1列島線上への前方展開は中国のミサイル攻撃に対して脆弱なうえ、台湾海峡などの紛争に米国を巻き込む危険を高めているとみる。
そこで提言するのが、米軍のアジアにおける前方展開を第1列島線(日本列島から台湾、フィリピンを経てボルネオ島に至るライン)から第2列島線(小笠原諸島、サイパン、グアム、パラオ、パプアニューギニアに至るライン)に後退させる戦略だ。

台湾有事への不介入を明確に
最も大きな転換となるのが台湾政策だ。
米国は現在、中国が台湾に侵攻した場合に軍事介入するかどうかを明確にしない「戦略的曖昧性」を維持している。これに対し提言は、台湾防衛に米軍が介入しないことを明確にすべきだと主張する。
仮に中国が台湾を統一したとしても、それだけで中国がアジア全体を支配できるわけではなく、米国の核心的利益への影響は「管理可能」だとする。むしろ、台湾をめぐって核保有国である中国との大規模戦争に突入するリスクの方が大きいと判断する。
さらに韓国についても、米韓相互防衛条約を解消し、駐留米軍の大部分を撤収するよう提言する。韓国には北朝鮮の通常戦力に対抗できる軍事力がすでにあり、自国防衛を担うことが可能だというのが理由だ。
フィリピンについては、同国に南シナ海の岩礁を中国による占領の試みから防衛する能力はないが、それらの岩礁を守るために中国との戦争に巻き込まれるリスクを負うのは米国の利益にならないとし、防衛義務を負う条約ではなく、より限定的で狭い範囲の約束に切り替えるべきだと主張する。
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日本については、「地域の勢力均衡において最も重要なプレーヤー」と評価し、韓国やフィリピンなどと比べてより慎重なアプローチが必要だと述べている。