【ASEANウォッチ②】
インドネシア海軍と中国海軍が台湾東方海域で共同訓練~「敵」を作らないインドネシアのしたたかな「全方位防衛協力」
中国人民解放軍は12日、台湾東方海域でインドネシア軍と海上共同訓練を実施したと発表した。中国とインドネシア両海軍のフリゲート艦が編隊を組んで航行し、通信や洋上補給の訓練を行ったという。中国人民解放軍は、この訓練で「地域の平和と安定を共に守る意思と能力を十分に示した」と主張した。
一方、インドネシア海軍は同日、訓練は「PASSEX」(Passing Exerciseの略:通過訓練)と呼ばれるもので、「海軍間の友好関係の表現、軍艦による海洋外交として世界中の海軍が行っている親善活動」の一つだと説明した。
また、同国の外交政策は「あらゆる国との協力」を追求しており、PASSEXも中国だけでなく複数の国と実施しているとした。
実際、今回中国海軍とのPASSEXに参加したフリゲート艦「イ・グスティ・ングラ・ライ」は、8日に海上自衛隊の護衛艦「おおなみ」と相模湾でPASSEXを実施した。
イ・グスティ・ングラ・ライはロシア海軍との共同訓練「オルルーダ2026」に参加するため、7月下旬、ウラジオストクを訪れていた。海上自衛隊や中国軍とのPASSEXはその帰路に実施したものであった。

8月8日に相模湾で海上自衛隊と共同訓練を行ったインドネシア海軍のフリゲート艦「イ・グスティ・ングラ・ライ」(自衛艦隊ウェブサイトより)
近年、米国、日本、オーストラリアと防衛協力を強化
インドネシアは近年、米国や日本、オーストラリアなどとの防衛協力を強めている。
今年4月、インドネシアのシャフリィ国防相と米国のヘグセス国防長官の会談がワシントンで行われ、両国の関係を「主要防衛協力パートナーシップ」(MDCP)」に格上げし、①軍の近代化と能力構築②専門的な教育③訓練および作戦における協力――を柱に防衛協力を進めていくことで合意した。
8月下旬~9月初旬には、インドネシア軍と米軍が主催する大規模な多国間合同訓練「スーパー・ガルーダ・シールド2026」がスマトラ島やカリマンタン島で実施される。これには自衛隊のほか、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、ニュージーランド、オランダといった西側諸国の軍隊も参加する。
また、2月にはオーストラリアとの間で、いずれか一方の国が脅威にさらされた場合に両国が協議することを定めた「共通安全保障条約」を締結した。
さらに、5月には日本との間で、共同訓練や防衛装備品・技術分野における協力を推進することを盛り込んだ「防衛協力取決め」を結んだ(シャフリィ国防相と小泉防衛相が署名)。

5月に開かれた多国間合同訓練「スーパー・ガルーダ・シールド2026」の最終計画会議(インドネシア国防軍ウェブサイトより)
伝統的な「自由で積極的な外交」は揺らがず
こうした動きの背景には、地域における中国の急速な軍事的台頭があるのは間違いない。だが、米国が主導し、同盟国の日本、オーストラリア、フィリピンなどが加わる“中国包囲網”(中国抑止ブロック)にインドネシアが加わりつつあると見るのは早計だ。