高市内閣は非核三原則の見直しに踏み込む可能性大! 背景にアメリカの核兵器政策の大きな変更が。
非核三原則の見直しに含み
8月6日に広島で開かれた原爆死没者慰霊・平和祈念式典での高市早苗首相のあいさつが波紋を呼んでいる。日本が国是としてきた「非核三原則」について、こう語ったのだ。
「我が国は非核三原則を堅持しており、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向けた努力をたゆまず続けていく使命を担っています」
これは、現在は非核三原則を堅持しているという現状を述べているに過ぎす、今後も堅持し続けるという意思表明は含まれていない。
昨年の同式典での石破茂首相のあいさつは違った。
「非核三原則を堅持しながら、核兵器のない世界に向けた国際社会の取り組みを主導することは、唯一の戦争被爆国である我が国の使命です」
こちらには、非核三原則を今後も堅持していくという意思表明が含まれている。高市首相が石破前首相の表現を踏襲せず、現在は非核三原則を堅持していると述べるにとどめたのは、今後の見直しに含みを残すためであろう。
実際、式典後の記者会見で「年末に向けた安保三文書改定の議論の中で、非核三原則を見直す考えはあるか」と質問されると、「まさに年末に向けて検討を進めているところなので予断することは差し控える」と回答し、見直しの可能性を否定しなかった。

被爆81年の広島・原爆死没者慰霊・平和祈念式典であいさつする高市首相(首相官邸ウェブサイトより)
首相就任前から非核三原則の見直しを主張
非核三原則の見直しは、高市氏の首相就任前からの持論だ。
同氏は2024年の編著書『国力研究 日本列島を、強く豊かに』(産経新聞出版)のなかで、2022年に岸田内閣が安保三文書を策定した際、非核三原則の「持ち込ませず」は米国に「核の傘」の提供を求めることと矛盾するとして見直しを要請したことを明らかにしている。
こうした考えは、小泉進次郎防衛大臣も共有していると思われる。
小泉氏は7月17日放送の「言論テレビ」(ジャーナリストの櫻井よしこ氏が主宰するインターネット番組)に出演し、北欧のフィンランドが7月に核兵器の自国領内への持ち込みを認める政策転換を行ったことを例として挙げた上で、「(日本も)危機感を持って、(核兵器に関する)あらゆる政策をタブーなく議論し、進めなければならない」と強調した。
後日(7月24日)、記者会見で「安保三文書の改定を見据え、非核三原則の見直しなどもテーマに政府として議論していくということか」と尋ねられると、「一般論として、国民の命と平和な暮らしを守り抜くための政策について、あらゆる選択肢を排除することなく議論していくことが重要であるという趣旨を述べたもの」と弁明し、非核三原則については前述の高市首相と同じく「堅持している」と現状を述べるにとどめた。小泉防衛相もまた、「今後も堅持する」とはけっして口にしないのである。
年末に予定されている安保三文書の改定(閣議決定)でそれをやるかはわからないが、高市内閣はいずれ非核三原則の見直し(「持ち込ませず」の修正)に踏み込むというのが、私の見立てだ。
こう考えるのには、確かな理由がある。
そう遠くない将来、日本が米国の核兵器の持ち込みについて議論し、方針を決断しなければならなくなる可能性が現実に存在しているからだ。
日本に寄港する米攻撃型原潜と「2032年問題」
7月24日午前、神奈川県横須賀市にある米海軍横須賀基地に1隻の原子力潜水艦(原潜)が入港した。
ハワイのパール・ハーバーを母港とするバージニア級攻撃型原潜「バーモント」で、乗組員の休養や物資補給のため横須賀に寄港した。
このように、日本には米海軍の攻撃型原潜が頻繁に寄港している。寄港地は、米海軍の主要な基地である横須賀、佐世保(長崎県佐世保市)、ホワイト・ビーチ(沖縄県うるま市)の三カ所である。
ハワイやグアムを母港とする米海軍の攻撃型原潜は、インド太平洋地域から中東にかけての地域紛争の抑止・対処のために前方展開している。日本の港に頻繁に寄港するのも、そのためだ。
現在、米海軍は攻撃型原潜に核兵器を配備していないので、日本への寄港が非核三原則との関係で問題になることはない。
だが、近年中国の戦術核戦力が強化されている状況を受けて、米国も戦術核戦力の強化に乗り出している。その「目玉」が、攻撃型原潜への核兵器の配備だ。
現在、米海軍の攻撃型原潜には通常弾頭の巡航ミサイル(トマホーク)が配備されているが、これに加えて核弾頭の巡航ミサイル(SLCM-N)も配備する計画だ。今年度(2026会計年度)の国防権限法は、国防総省とエネルギー省国家核安全保障局に対して、2032年9月までにSLCM-Nの限定的な配備・運用を開始できるようにすることを義務付けている。
米海軍の攻撃型原潜にSLCM-Nが配備されるようになれば、日本への寄港が非核三原則との関係で問題になる。
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